えぐしろ日記

剛さんが大好きみたい。( ・ω・ )/剛さんのお芝居情報には、尋常でない喰いつき方をします。

書いたのが出てきた。

 私が彼にあったのは、初夏の防波堤でした。
平日の海は人気もなく静かで、彼は一人波に向かって座り、背を軽くかがめるようにして一心にハーモニカを吹いているようでした。
 ろくな朝食が見つからずに、あちこち物色していた私は、たまたまそこを通りかかったのだけなので、彼がもし、ただぼんやりと海を眺めているだけだったら、目も止めなかったかもしれません。
 ハーモニカのメロディーは、さほど上手いものではありませんでした。
どちらかと言えば単調で、売り出したとしてもさほど人の耳に止まるものではないでしょう。
 なのに、私は足を止めて、彼の後ろ姿をじっと見つめていました。
まだ若い青年ですが、学生と言うほどの年齢はとうに超えているように思えます。
今時に言う、モラトリアムな若者なのでしょう。ありふれたことです。
ありふれた存在です。
 私が足を止めたのは、彼が特別に映ったからではありません。
私というありふれた生涯の中で、夏を迎える強い風の吹く防波堤で、まるで私一人の観客のために演奏がなされているような、奇妙な偶然の行き合わせに心がさざめいたのです。
 視線というものは不思議と力があるものなのかもしれません。
彼は振り返ると私を目に留め、奇妙な表情をしました。驚いたような、微笑むような。
 彼もまた、偶然の行き合わせに心さざめかせたのかも知れません。
年季の入った色合いのリュックを引き寄せて中身を探りながら、私へ向かって口笛を2,3度吹きました。
 私が躊躇しているあいだに、ようやく彼は目的のものを取り出し、その手にはよれよれのアルミホイルに包まれたおむすびがありました。
それを半分ほど取り崩すと、彼は私と彼とのちょうど中間あたりに放り投げました。
「やるよ」
 そう言って、促すように自分も残りの半分を食べ、ペットボトルに入ったお茶を飲み干し、そうして尚、動こうとしない私に背を向けて、変化のないメロディーをハーモニカで演奏し始めました。
 私は彼が完全に背を向けるのを待ってから、アスファルトに転がったおむすびに近づくと、朝食にありつきました。
 すっかり平らげて、鼻先を上げると、彼がすぐ側まで来ていました。
少し腰が引けるように私の頭を撫でると、誰に言うともなくつぶやきます。
「お前、首輪ないんだなぁ。飼ってやりたいけど・・・」
 人にはいろいろ事情があります。彼はそれ以上を口にすることなく、再び防波堤の上へ戻って、ハーモニカを手にしました。
 私は踵を返して、車道へと歩き出しました。背後から、眠くなるようなハーモニカが聞こえてきます。どうやら、私へ向かって奏でているようです。
 彼の一日と、私の一日が、一瞬重なり合って、静かに別れていきました。
 そしてじきに、夏が来ます。

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 そういえば、昔、ジャニーズバトルロワイヤル的なものを書こうとしたことがあったなぁ!でもみんな中途半端で書き終えてないんだけどwwと思って、ゴソゴソ探していたら、ちゃんと最後まで書いた短編小説?みたいのが出てきたので、載せておこう。
 これ、ネットのどこかのサイトで「100のお題で小説を書こう!」みたいなページがあって、そこにあった18番目のお題「ハーモニカ」で作ったやつです。すごい前に書いたもので、自分が書いたのじゃないみたい。(笑)

 ついでにバトロワもどきも載せておこう。Jフレでバトロワがあったら…という内容なんだけど、ちょっとエグいし、特定のタレントさんのファンに「ひどーい!◯◯君、そんなんじゃないもーん!」と言われそうな感じなんで、笑って許せる方のみ覗いてもらえれば。 ========
バトロワです。
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「岡田…?」
「だって、迷ったってしゃーないやろ」
返り血が端正な顔に飛び散り、奇妙な非現実感を漂わせていて、長野は呆けた。
 岡田の足下には、坂本の躯が崩れ落ちていた。
 どうしたんだよ。なにやってんだ、坂本。死んだフリなんて。ああ、岡田が振り上げているのは日本刀だ。コイツ男前だからな。嫌になるくらい刀が似合って…。
 口づけが出来るほど近づいた岡田の顔と、骨がきしむような音を顎下に感じて、長野は思考を途絶えさせた。噴水のような血しぶきは、長野の目に映ることはなかった。
 物体となって地面に倒れる仲間を見やり、岡田は日本刀を強く一振りした。血と脂が周囲に払われ、人を切る前の輝きが戻る。
「へえ、名刀なんや」
 呟きながら周囲を見渡す。この島の一番高い場所。ここからは島の四方が見渡せる。島じゅうに木々の緑が鬱蒼と茂り、人の姿など探すことはできないが、それでも岡田は目を細めてぐるりと下を検分する。ここに、自分以外あと10人の人間がいる。
 岡田は、ちらりと左腕に目をやる。7時32分。タイムリミットまで、あと2日と16時間28分。
 ふと、違和感に気づいて、再度下界を見る。遙か崖下、海辺の方に、微かに煙が上がっているのが目に入る。
 岡田は目を細めて踵を返した。口唇の右端が、微かに微笑みを象っていたことを、本人も気づいていなかった。

「なんなんだよ、なんなんだよ、コレよーーー!!!」
 野獣のように吠える長瀬を、国分は呆れた目で見る。
「だから、俺たちあと約3日の命ってことでしょ。もう、いい加減理解しなよ」
「だー!それは分かってんの!そうじゃなくて!なんで勝手に命の期限決められて戦わなきゃなんないのさ!!納得いかねえーーー!!」
「あー、うっさい!だから、みんな納得なんてしてないんだよ!取りあえず騒ぐな、うっとおしい」
「まあまあ、腹減って気ぃ立ってるんやろ。食事にしよか」
 場にそぐわないほどのんびりとした声をかけると、城島は程良く焼けた魚を差し出した。
「うわっ、うまそー!なに、コレ。誰が取ったの?」
 あっさり食欲に負けて、喚いていたことを忘れたように長瀬が瞳を輝かせる。
「こんなん取るゆうたら、山口君に決まっとるやろ。まあ、3匹しか取れへんかったから、分けるしかないけどな」
「えー、二分の一匹ずつか〜。腹が持たないなぁ」
「太一はいっつもおいしい物ばっか食ってんだから、たまには粗食もいいんじゃない」
 からかいを含めて松岡が言う。

「う…嘘…。松岡…?」
 半分笑ったように顔を歪めて、国分は今朝までいつものように会話していた仲間を抱き起こす。顔は綺麗なままで、瞼は閉じている。今にも目を開けて「騙されてやんの〜」とからかいの声を上げそうだ。傷は心臓を一突きで貫き、争った様子さえ無かった。
「何、これ…。何なんだよ、これ…。」
 意味を持たない呟きをこぼしながら国分は周囲の仲間を振り仰ぐが、答える声はなかった。城島は青ざめて松岡の死顔を凝視し、長瀬は面を厳しくして宙を睨み付けて沈黙している。
 ぽつりと城島が呟いた。
「別グループが、この近くまでもう来とるんや…」
「でも!松岡がこんな簡単に…」
 殺されるなんて、とは、国分には口に出来なかった。まだ、心のどこかでは認めていない。松岡が二度と目を輝かせることがないことも、今自分たちが置かれた状況も。
「松岡は、まさか本当に殺し合うなんて思ってなかったんちゃうか?だから、他の奴らが来ても警戒してなかったんやと思う」
 そう言いながら、城島も現実感がなかった。「他の奴ら」と口にしつつ、その像は曖昧で輪郭が不明瞭であった。他の奴らとは、つまりV6かKinKiのどちらかの誰か、ということだ。でも、そんなことがあるんだろうか。一体誰にそんなこと出来るっていうんだろうか。坂本が?ゴウが?…有り得ない!!でも…。
「…KinKi…」
「え?」
「…KinKiの二人ちゃうか?」
城島の呟きに、国分はうろたえて長瀬を見る。長瀬は厳しい眼のまま、城島に目をやる。
「…あいつらはそんなこと…」
反論しかけた長瀬に、城島は言葉をかぶせる。
「剛も光一も、一人やったら絶対こんなこと出来へん。けど、二人一緒だったら?二人でどっちか片方だけでも生き残らせること考えてたら?」
 長瀬も国分も、否定の言葉を口にすることができずに黙り込む。城島のその言葉は妙にリアルだった。
「そうや、山口は?探さなあかん!あいつも他のグループに注意払ってないはずや!危ない!!」
「ちょ…、待てよ、リーダー!!」
 長瀬が止める暇もなく、城島は森へと駆けだしていった。

 神経が高ぶって敏感になっていたのだろう。普段なら気にも留めないような小さな音を耳にして城島は振り返った。草を踏み分ける音だった。
「誰か…いるんか」
 沈黙。耳の側で心臓が鳴っているかのようにドクドクと言っている。
 そして、ほどなく。
「…リーダー?」
 草むらから顔を覗かせたのは、山口だった。困ったような顔をしている。
 城島の口から安堵の息が漏れる。良かった。
「あのな、俺ら、一人になったらアカン。他のグループがこの辺に来てんねん」
「他のグループ?」
「そう、だから危な…」
「ゴメン。リーダー」
 城島は目を見開いた。胸を襲った強烈な打撃。自分の左胸に、槍が深々と刺さっている。その先を辿ると、槍を握りしめた山口の太い腕と、やはり困ったような顔。
 満天の星空が目に映り、自分が仰向けにひっくり返ったのだと気づく。それもすぐにぼんやりと像を結ばなくなり、混濁し始める意識の片隅で、自分の瞼を閉じさせる、厚みのある掌の感触を感じた。
 ああ、そうか。
 それが、城島の脳裏に浮かんだ最後の言葉だった。


「おい、いつまで寝てんねん」
「…あ?なんや…?」
 不機嫌に薄目を開けて無理矢理起こされた不平を言おうとしたが、顔を覗き込む剛の顔が、不安そうな色を浮かべているのに気づき、光一は完全に覚醒した。
 そうか、ここは。
 楽屋ではなかった。もちろん自宅でもない。屋内ですらない。
「あー…そっか」
「そっか、ってお前なぁ。よく寝られるわ、光一。神経太そうに見えてほんまはそうでもないのかな、なんて思ったこともあったけど、実際、鋼鉄ザイール並やな」
「なに、剛、おまえ寝てないの?顔色悪いで」
「顔色くらい悪くなるわ。…普通、寝られへんやろ、こんな事に巻き込まれて。どうしょうか」
「どうしょうか…って、何も…思いつかへんけど」
 いきなり見も知らぬ無人島へ連れてこられて、3日後の真夜中までに自分以外を皆殺しにしろ、そうしなければ首にはめられた時限爆弾が頭を吹き飛ばす。そう告げられては、どうしようもこうしようもない。あまりのこと過ぎて、光一の頭は対策を考えるどころか、動揺すらしなかった。なんて非現実。切羽詰まった現実味がわかない。
 それやったら、と剛が言った。
TOKIOとV6を探しにいかへんか?」
「え?」
 光一が目を見開くと、剛は言葉を続けた。
「みんなもな、こんな妙なことになって困ってると思うねん。みんなと合流すれば、なんとかなる道もあるかもしれへんと思ってな」
「う…ん」
 光一は、剛ほど楽観的になれなかった。いや、剛だって楽観視しているわけではないだろう。他に手がないだけだ。
 みんなを捜し当てたところで、そろってタイムオーバーでおだぶつになるだけか、悪くすれば瀬戸際に追いつめられて凄惨なことになりやしないかという考えが頭をよぎる。



 剛が、懐に刃を隠し持っている。光一から隠している。
いつ彼はその刃を振り上げるのだろうと、光一は考えた。
仕方ないやんな。そら、誰だって死にたかない。剛だって生きたいはずや。俺だってそうや。けど、剛が俺を殺さなくても、この首にはまった厭らしい装置が、尊厳も何も無視した殺し方をするのだ。だったら、まだしも剛に殺してもらった方が、人間らしい最期かもしれない。
 死ぬしかないなら、殺されるしかないのなら、相手は剛がいいのかもしれない。
 そうすれば少なくとも剛だけでも生き残って、そうして生涯俺のことを忘れないだろう。
 
 じりじりと時限がせまっている。隣に座った剛の顔を盗み見ると、心なしか青ざめて強ばっている。そろそろかな、とうっすらと思う。まだ実感は湧かない。でも、剛は懐にした刃物をもうすぐ…。
「光一」
「え?」
 呼びかけられたことに驚いて光一は剛の顔を見た。おい、呼びかけたらアカンやろ。不意打ちでなきゃ抵抗される、とか考えないのだろうかコイツは、と変な心配がよぎる。
 そんな光一の思惑を裏切って、意外なほどしっかりとした声で剛が言葉を紡ぐ。
「こんな時にお前になんて言えばいいのかなんて考えてなかったし、だから、何て言って良いのか分からへんけど、俺はお前と組めて良かったと思ってる」
 何やねん。この期に及んで、一体何を言おうとしているのか。
「普通に出会ってたら、ほとんど口を利くこともあらへんかったかもしれんけど、多分、お前とこういう出会い方をしたことは神様が決めたことやったんかなとも思ってる。
…だからこの終わり方も神様が決めたことなんやと思うねん。
あのな、」
 何だ?一体何を言おうとしているんだ?


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 思いついた箇所だけ書き留めてたので、場面がぶつ切りです。(笑)
 もうちょっと書いてあるんだけど、なかなか夢見がちな感じなので、この辺にしておこうと思います。ww